商談を断られてからずっと“気になる会社”だった

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▲電通出向時代の市川

市川 亮祐がD2Cの存在を知ったのは、前職のベンチャー企業に勤務していたころ。モバイルでもインターネット広告が登場し、市川自身もこうした事業に携わっていたときのことでした。

市川 「当時D2Cがモバイル向けに出していた広告プロダクトは、インターネット広告を扱う代理店やクライアントの間でも、高い効果を出していると評判になっていたんです。そこでD2Cに、そのサービスを扱わせてほしいという話を相談しました。ただ、そのときはすげなく断られてしまいました。そのときの印象が強烈で、そこからずっとD2Cは “気になる”会社でしたね」

その後しばらくして、市川はステップアップのため転職を考えるようになります。そのとき頭に浮かんだのは、他ならぬD2Cでした。NTTドコモと電通のJVであり、パワーのある媒体を扱う“気になる”会社で、自身がインターネット広告で培ってきた経験を生かしてみたい。そう考え、2008年にD2Cへの転職を果たしたのでした。

入社後は、希望通り媒体の担当者となり、NTTドコモの媒体全般を4年間担当。その後、自ら希望し、2012年に電通へ出向します。

市川 「D2Cとしては新たな試みとして、電通のクライアントに近いポジションのプランニング領域で数名を新たに出向させていただいており、私もそのチームに合流させていただきました」

仕事は大変なこともありましたが、周りの方々の支えもあり順調でした。一方でひとつの懸念がありました。それは、自分と同じように出向した社員たちが、任期を終えても帰任せず転職してしまうケースが見られることでした。 

市川 「電通で出向させていただいて貴重な経験を積んだメンバーがD2Cに戻ってから、活躍できる環境が少なくなっているのが原因ではないか?と考えました。D2Cへ帰任して活躍できる場を、早急につくらなくてはいけないと思いました」

市川は2016年にD2Cに帰任し、その体制づくりに尽力しますが、その原動力となったのは市川のD2Cに対する想いでした。

市川 「一言でいえば、D2Cが好きだったんです。2008年に入社してから、いろいろとやりたいことをやらせてもらい、しっかりと評価もいただきました。D2Cだからこそできた仕事もいろいろあり、会社には非常に感謝しています。それにしっかりと恩返しをしたい。出向していたメンバーが、戻って活躍できる場をつくり、その経験をD2Cの今後に生かしてもらいたいという想いが一番強かったですね」

さらなる成長を見据え、先手を取って統合を推進

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▲画像左

市川のこうした会社への想いは、その後の彼の活動にも大きく影響します。そのひとつが、2020年4月に実現した、D2Cデジタルマーケティング事業本部とD2C Rとの統合です。

D2C RはD2Cから生まれたデジタル領域の広告代理店。一方のD2Cデジタルマーケティング事業本部も、D2Cのなかでデジタルマーケティング事業を展開していました。市川自身、D2C R代表取締役社長の岡 勇基とは旧知の仲で、週に1度は会議で顔を合わせ、2カ月に1度お酒を飲むような関係。お互いに刺激を受けながら切磋琢磨する良きライバルでもありました。 

市川 「岡とはよく酒の席で、ゆくゆくは一緒に仕事がしたいと話していましたが、組織機能も顧客層も、カルチャーも異なる中で、単なる足し算の統合をしても仕方がないという想いもありました」

統合の話が加速したのは、2019年の9月。お互いが持っている課題感や、この先自分たちのやっていきたいこと、市況的に起こるであろう事象を、ふたりだけで話し合ったことがきっかけでした。 

市川 「外部環境はもちろん、企業のマーケティングの考え方自体が変化していく中で、この先ネットの広告代理店として、もっと広くいえば広告代理店全般が、どういう立場で仕事をするべきなのか、また競合とどこで差別化を図っていくのかということを真剣に議論しました。その中で、抱いている課題感も、将来描いている姿も、同じだということがわかりました。そこから統合の話が現実味を帯びてきたんです」

とはいえ市川がD2Cに戻ってから手がけていたNTTドコモのプロジェクトは、2019年度も過去最高益を出すなど非常に好調。足元で何か問題があったわけではありませんでした。

市川 「統合しなくても、向こう数年は、お互いに問題なく成長できたと思います。ただ僕自身、この好調な業績をさらに伸ばすと考えた場合、このペースでいくと3~5年後には踊り場にくるんじゃないかなという懸念があったんです。
その考えは岡も同じで、お互いが足りない領域を補う必要性も感じていた。だからお互いの強みで、足りない部分を補うことで、さらに成長しようと考えたわけです」

D2Cデジタルマーケティング本部が持つ大きな販路と、D2C Rの持つプロモーションの運用ノウハウやクリエイティブの機能を合わせれば、実務でも売上規模でも効果がある。また人員も200名ほどになるため、あきらかに仕事ができる量も、ジャンルも増え、マーケットに対するプレゼンスも上がる。ふたりは毎日のように、組織や事業について細部にまで議論を重ね、数カ月かけて、このタイミングでの統合が、ベストだという確信を得たのでした。

考え方を浸透させる一方で、実務面の環境整備にも着手

市川たちは、事業、組織、制度などさまざまな角度から検討し、その結果を持って2020年1月に、幹部を集めたオフサイトミーティングを開催。D2Cデジタルマーケティング事業本部とD2C Rそれぞれが持つ機能や実績、現状の課題を紹介した上で、それらを踏まえて長期的に目指すべき姿を幹部と共有し、統合への準備を進めていきました。

市川 「考え方の共有は一度でできるものではないし、唐突に現場に伝えてうまくいくものでもありません。
現在は、経営会議にマネージャー以上を集め、毎週、彼らと課題や今後の施策を議論しながら、考え方を浸透させている段階です。コロナ禍での在宅ワークの折、難しい面もありますが、そこは地道に進めています」

いくつかの具体的な施策も取り組みを開始しています。そこは旧D2Cデジタルマーケティング事業本部もD2CRも強化が必要な部分のため、プロジェクトとして立ち上げる形で進めています。また、業務フローやツールなどの実務に関わる部分についても基幹システムから見直し、より使いやすいしくみやツールの構築を図っています。 

市川 「当初は、D2CRの業務フローやしくみに、われわれが乗っかる形で進めていたので、旧D2Cデジタルマーケティング事業本部のメンバーには相当ストレスがあったと思います。ただD2CRの方が、その辺りを踏まえてカバーしていただいたおかげもあり、統合後は計上漏れなどの事故もなく進めることができました。
今後、基幹システムを入れ替える際には、また相当なストレスがかかるとは思いますが、安全性、正確性、効率性は確実に上がります。生みの苦しみと考え、みんなで取り組んで乗り越えたいと思っています」

「統合してよかった」と、みんなが早く思えるように

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▲2020年現在

統合によりD2CRが目指す中長期的な姿は、デジタル総合代理店です。そこに向かうためにはまず、インターネットの専業代理店の中での地位を確立する必要があると市川は考えています。また、それを実現するためには、現状足し算にとどまっている統合を、掛け算にもっていく必要もあると語ります。

市川 「デジタル総合代理店を目指し、自分たちの実力を上げていく、足し算を掛け算にしていくためには、やはりそれぞれのレイヤーで、自分の成すべきことをしっかり認識する必要があります。僕らは3~5年先の未来を見据えていますが、部長、マネジャークラスには最低でも1~3年先を見据えて動いてほしいですね。
また現場の社員には日々の仕事と向き合う中で、その仕事がどんな意味を持っているのか、その先に何があるのかを常に考えてほしい。それができるようになれば、掛け算の効果が生まれてくるのではないでしょうか」

そのために、社員それぞれが納得して動ける環境をつくる。それが自分たち経営側の役割だと語ります。また、この目標を実現していくためには、統合から生まれるカルチャーも重要になるといいます。 

市川 「カルチャーは一番時間のかかる部分です。まだまだ浸透しているとは言えませんが、そこは代表の岡を中心に、みんなで向き合い続けていこうと思っています」

統合では新しいことをどんどん取り入れていかなければならないため、実際に現場にストレスはかかります。ただそこで不平不満を言うのではなく、お互いに気兼ねなく意見を出し合い、ダメなところをみんなで変えていく。市川たちはそんな未来を描いています。

市川 「僕もそうですが、みんな会社のことや一緒に仕事している仲間のことが好きだと思うんですよね。
だから、『やっぱり会社を良くしていきたい』と、みんなが思えるようにしたいし、そうなると嬉しいですね。『あのとき統合してよかった』と、社員みんなが思えるタイミングを、いかに早くつくるか。それが僕の今の仕事だと思っているので」

この統合をみんながハッピーだったと思えるものにするため、日々奮闘する市川。コロナ禍によりコミュニケーションが取りづらい中でも、両者の融合は着実に歩みを進めています。