子育て後の派遣登録、週3日勤務で踏み出した社会復帰への一歩

また働きたい。心の片隅でそう思いながら、迎えた専業主婦15年目。登内 美紀子が働き口を探そうと目を向けたのは、新聞広告の求人情報でした。

登内 「目に留まったハウスアドバイザーの募集に、会社名もろくに確認せず電話をしました。それが旭化成アミダスだったんです。振り返れば、びっくりするほど勢いで行動していましたね。とにかく働きたいという思いが勝っていたんです」

登内がハウスアドバイザーに注目したのは、婚前のキャリアがあったからです。家政学部の住居学科で住宅設計や工学を学び、卒業後は大手設計事務所に就職。約8年間務める中で1級建築士の資格を取得し、大規模施設の意匠設計に携わりました。そこからステップを駆け上がることも選択できましたが、出産を機に退職。以降は子育てに専念してきました。

登内 「旭化成アミダスが人材派遣会社だということは、登録後に理解しました。ハウスアドバイザーは残念ながら落ちてしまったのですが、その2ヵ月後、旭化成ホームズの新規事業のポスティングについて相談が来ました」

こうして登内は無事に社会復帰を果たします。新規事業の認知を高めるためのポスティング業務は、あらゆることが白紙の状態でした。登内は積極的に提案し、資料作成、ポスティング方法までも模索していきます。その姿勢は、やがて社員からの信頼へとつながっていきました。

登内 「営業の方々の人柄がとても良く、提案を気さくに受け入れて下さり、派遣という立場にとらわれずやりがいを感じることができ楽しく働けました」

半年後、ポスティング業務そのものの発展性に限界を感じ、登内はポスティング業務の継続を考えていたとき、周囲の方々が行っていた企画設計への移動ができないかとお願いをしました。

登内 「以前から同事業推進部の部長から『設計の業務を手伝ってもらえないか』と声がかかっていたのです。出勤日数を増やすことも併せて提案されたのですが、私自身の生活のペースもあったので正直にその旨を伝えました。

設計担当者はフルタイムで働くのが一般的ですから、派遣が週3日で働くというのは異例だと思いますが、私の意思を尊重してくれました。こんな希望通りの職に就けて社員の方々も本当に良い方が多く、ラッキーだったとしか言いようがありません」

限られた勤務時間で成長し続ける、努力を惜しまない姿勢

登内は現在、旭化成ホームズの中高層建築における企画・設計を担当しています。営業担当者が持ち帰った商談をもとに、土地や法規の観点から建築可能なモデルを提案。図面チェックや設計図書の整理なども業務に入ります。3DCADの技術と積み重ねた知見、社内での丁寧なコミュニケーションを求められる仕事です。

登内 「営業担当者とコミュニケーションを取りながら、その土地に建設可能なプランやデザインを作り上げていきます。企画基本設計担当者は現在7名いますが、派遣は私だけです。

旭化成ホームズはもともと4階以下の小規模物件を中心に取り扱っていたので、新規事業である5~8階の中高層建築はメンバー全員が手探り状態でした。こうした中で積極的に企画・設計を担当できるのは、かつて働いていた大手設計事務所での経験があるからかもしれません」

とはいえ、15年間のブランクはやはり長いものです。かつては主に2DCADを使っていた登内は、これを機に3DCADの技術を学びなおしました。また、厳しい基準があるヘーベルハウス仕様についてはゼロから勉強。経験者とはいえ、並々ならぬ努力を重ねる必要がありました。

登内 「数ヵ月ほど経って、ようやく3DCADに慣れました。そして社員の方々の丁寧な指導を受けつつ件数を重ねるうちに、『この土地はこの設計がいいな』というアイデアもひらめくようになり、今では数日あれば形を作り上げられるようになっています。

システム住宅は定型が決まっているので、設計を美しくまとめられるのが楽しいところです。前職で経験した大型施設の建設は、どんなアプローチでも構わないからこそ、発想力が求められていました。人それぞれだと思いますが、私は今の仕事のほうが向いているようです」

週3日という限られた勤務時間の中で、自身の価値を最大限に発揮している登内。その働きぶりの根底には、“成長”というキーワードがあります。

登内 「ただ楽しいだけではなく、もっと役に立ちたい、成長したいと思っています。これは仕事だけでなく、料理や趣味などにも通じることですね。だから言われた以上のことをやろうと努力しています。

一方で、派遣は責任を取りづらい立場です。少しでもリスクを感じたときは必ず社員に相談し、確認してもらいます。細かな設計作業は自分でやりますが、複雑な条件があるものや受注につながりそうなものは、社員の方と確認し合いながら進めていきます」

自己成長を意識しながら、積極的に仕事を取っていく。一方でリスクヘッジは慎重に行い、自身の責任の所在を明確にする。こうした登内の姿勢は、確かな信頼と共に中高層事業推進部の設計チームを支えています。

家族や趣味と仕事は両立可能──信頼が導いた柔軟な働き方

大手設計事務所でのハードワーク、結婚と出産、子育て、住宅メーカーでの週3日勤務。そんなキャリアの中で登内がもっとも“成長”を感じたのは、子育てです。

登内「なんだかんだ言って、子どもたちが私を成長させてくれたと思います。仕事の話をしていても、やはり家族の存在は切り離せません。母になったら子どものそばにいたいと以前から考えていたので、一社目を辞めるときも心残りはありませんでした」

一級建築士の資格を持ちつつも、揺らぐことなく家族との時間を選んだ登内。やがて生まれた娘と共に習い始めたクラシックバレエは、今は何にも代えがたい趣味となりました。こうして主婦として充実した日々を送っていた登内ですが、再び働くことを選んだことで、新たな刺激のある生活スタイルを築きつつあります。

登内「コロナ禍ということもあり、現在は在宅ワークを続けています。スキマ時間で家事をしたり、同じく在宅ワーク中の旦那と一緒に昼食を食べたり……オンオフを切り替えるのは難しいですが、出勤していた頃と比べて生活に余裕ができました。

また、勤務日も融通をきかせてもらっています。子供の保護者会や私用でお休みをいただきたいときは、別日出勤や半日勤務にしてもらうこともあります。柔軟な働き方を選ぶためにも、やるべきことはきちんとやる。そうすることで信頼関係は築いていけるのだと思います」

クラシックバレエを楽しみながら、子育てに充てていたリソースを仕事に振り、過去のキャリアを活かして働く登内。理想に近い働き方を手に入れた今、目下の課題は学習時間の捻出です。

登内「週3日勤務では、スキルアップするための学習時間を捻出するのが難しいです。設計した図面に3Dの背景をつけるなどの工夫もしたいのですが、なかなか時間がありません。フルタイム出勤であれば、こうした問題は解決できるのかもしれません。でも、私にとっては趣味も家族も大切。ですから、キャリアを活かして時短で働ける中で、今できることをやっていこうと思います」

一度離れても復帰をあきらめないで──経験ある女性に豊かなキャリア選択を

結婚や出産を機に、キャリアや職を手放す女性は珍しくありません。そして現状の日本社会において、子育てを終えた女性がキャリアを活かして再就職することが難しいのも事実です。結果的にスキルを活かせる職を得た登内も、そこまで多くを望んでいたわけではないと振り返ります。

登内「日曜版の新聞の求人広告を見て電話するなんて、私の人生からは考えられないことでした。娘が中学校に入学したことが、働きたかった私の背中を押したんです。

振り返って思うのは、やはり何かを始めないと、何も始まらないということ。職種や雇用形態にこだわらず行動して、すべての業務で成長を意識してきたから、私は今の働き方にたどりつけたのだと思います。

とはいえ、ブランクを空けたあとの第一歩は、気楽なものではありません。私も面接に行くときは緊張しましたし、恐怖すら感じていました。これから再就職や社会復帰を検討している女性にはただ一言、『頑張って』と伝えたいです」

旭化成アミダスを介して、旭化成ホームズの設計担当になってから3年目。子育てをひと段落させて再び始まった登内のキャリアと成長は、未来へと続いています。